朱鷺の杜(IBIS)ブログ

情報論的学習理論(IBIS)に関する管理人の独断と偏見に満ちた意見

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「予測にいかす統計モデリングの基本」

今日は今年の4月に講談社から発刊された「予測にいかす統計モデリングの基本―ベイズ統計入門から応用まで」の感想です.

実は発刊されてすぐに,著者の樋口先生から献本頂いたのですが,なかなか通して読む時間がなく今頃になってやっと読み終わったという次第です.

一言で言うと,ベイズに基づく時系列解析についての本です.
中でも,樋口先生が造詣の深いパーティクルフィルタ(粒子フィルタ)とデータ同化を軸に,入門的な事項から実際にデータを扱う際のノウハウまで幅広く書かれています.

実はこの朱鷺の杜ブログで一時期アクセス解析をしていたことがあるのですが,そのときの検索ワードのトップは「パーティクルフィルタ」や「粒子フィルタ」で,それは以前に私が紹介した樋口先生の解説記事を紹介したものが検索に引っかかっているものと思われます.
まあそれだけパーティクルフィルタについて知りたいと思っている人が世の中には多いと言うことなのだと思いますが,今のところ日本語の本でパーティクルフィルタについて書かれたものはそれほど多くはありません.
(私の知っている範囲だと例えば「計算統計 2」の伊庭さんの解説,それから「ビショップ本下巻」にもちょっとだけ紹介されています. また,本書の巻末にも少し参考文献に触れてあります.)

私のところにもデータ解析の相談が舞い込むことが時々あるのですが,そのほとんどは時系列解析なので,こういう時系列解析の入門的&実践的な本は非常に有用だと思います.
時系列に関してはこのほか,強化学習なんかもあまり本がないですし,(時系列とは限りませんが)ノンパラベイズもいい本が出るといいですね.

さて,肝心の本書の中身ですが,易しいところからきっちり書いてあるのでほとんど前提知識はいりません. しかし,前書きにも書いてあるように,最初から一歩一歩積み上げる形で書かれているので「通読が必須」であり,「“つまみ食い”は難しい構成となって」いて,まさに教科書向きに書かれています.

私はあまり実際のデータ解析をやったことがないので,解説をかいてもあいまいになりがちなところも,樋口先生は長年の経験に基づいて断定的に小気味よく説明がされています. 例えばパラメータを最適化する際に「4次元程度までは直接法(メッシュに切って全探索)でやるべきである」というようなのは非常に実践的だなあと思いました.

(細かいところでは「フルベイズ」の説明のところで,パラメータの事後平均推定量をフルベイズと呼んでいるようなのですが,私はパラメータは推定しないのがフルベイズだと思っていました.まあこれは私の勘違いかもしれません.)

そして,最後の方の章に本書の最大の目玉であるデータ同化についての解説があります.個人的にはもっとページを割いてもらいたかったところですが,ページ数の制約などから仕方のないところでしょうか(巻末の参考文献を読めと言うことですね).シミュレーションと統計モデリングの融合という観点は非常に魅力的だと思うのですが,なんとなくシミュレーションが主で統計モデリングが従という感じがしてしまいます. 

まだ数回研究発表を聴講したりしただけなので理解が浅いのかもしれないのですが,シミュレーションが第0近似だとすると(シミュレーションの初期条件やパラメータを決めるのも統計モデルの一部かもしれませんが),その上に統計モデルでさらに精巧なシミュレーションモデルを立てるという感じにはならないのかなあという気がしました.

そもそもシミュレーション規模に比べてデータ数が少ないなど普通の統計的推論とはかなり状況が違うのかもしれませんし,囲みで書かれているように「工学 vs 理学」のようなスタンスの違いなども状況をふくざつにしているのかもしれません.

さて,ご存知の方も多いと思いますが,樋口先生は4月から統数研の所長に就任されています.非常にご多忙な中での執筆だったとことと推察しますが,樋口先生のような第一人者の方がこのように丁寧な本を書かれているというのはすばらしいと思います.

なお,樋口先生には以前にも「統計数理は隠された未来をあらわにする―ベイジアンモデリングによる実世界イノベーション」という本を献本頂いたのですが,これも関連が深い本なので簡単に紹介しておきます (Amazon の「合わせて買いたい」みたいですが^^;).

これは故・赤池先生の京都賞受賞記念シンポジウムの講演をまとめたもので,樋口先生(データ同化),石井信先生(ベイズフィルタ),照井伸彦先生(マーケティング),井元清哉先生(遺伝子ネットワーク),北川源四郎先生(AICとベイズ)という泣く子も黙るようなすごい先生方による第一線の研究の解説であり,非常に示唆に富んだ内容です. ただし,各記事は短いので行間をかなり埋めて読む必要があり,そういう意味では初学者には少しきついかもしれません.

以上,樋口先生関係の本の紹介でした. これらの本を読むとかなり頭がベイズっぽくなるので,これらの本を読んだら毒抜きに(?)ちょっと別の系統の本も読んでみるといいかもしれません.
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