朱鷺の杜(IBIS)ブログ

情報論的学習理論(IBIS)に関する管理人の独断と偏見に満ちた意見

研究者の日常

とある方から,一般の人にとって研究者は謎に包まれていて
一体何をしているのかという話を聞いたので,ちょっと書いてみようと思います.
詳しく書くと1冊本が書けそうなので,とりあえず今日のところはさわりだけ.
こちらのブログの読者の方は立派な研究者だと思うので,もう一つの方に書いたほうがよかったかな...
まあ今日は完全に一般の方向けという視点で.

研究者といっても,大きく分けると
1.企業の研究所の研究者
2.大学の研究者
3.国立研究所の研究者
とあって,私は3番目に該当するのでそれを中心に書きます.

大学も一応兼任したりして多少は知っていますが,我々との大きな違いは
学生さんがいて教育やその関係の仕事もしなければならないということでしょうか.

企業には勤めたことがないのでわかりませんが,これは千差万別で
大学や国立研究所の研究者に近いところから,ほとんど製品の開発しているようなところまで
さまざまあるという話です.

研究者の仕事は基本的に新しい発見をして論文を書くことです.
基本的にはその目的のためには24時間365日をどのように使ってもよいです(と私は思います).
実際私の研究所の勤務は多くの研究者が「裁量労働制」で働いており,一日の中でいつどれだけ職場に行くかはほぼ完全に自分の裁量で決められます.

ただし,実際には二つの理由で本当に完全な自分勝手はできません.

一つは法的な制約です.たぶん研究者を想定せずに決められた労働基準法の枠組みに縛られるので深夜10時以降の労働は制限されていますし,出張や休暇でなければ一日のうち一瞬は職場に顔を出す必要があります. 一応退勤管理もしっかりあって来た時間と帰る時間には web 上でクリックして証拠を残さなければなりません.(法人化される前はもっとずっといい加減で天国でした)

もちろん世の中にはブラック研究室っぽいところもあるようなのでそういうのに対する歯止めの役目はあると思います.(大学ではかなりヤバイところもあるようです)

もう一つは,研究上の理由です.
研究を完全に個人でやっていればまあ上のようにほぼ完全に自由ですが,場合によってはチームを組んで研究に取り組むこともありますし,その場合にはミーティングしたり,動物を扱う実験では時間的な制約も受けます.実験系でお子さんのいる研究者の方は我々ほど自由が効かないので大変という話も聞きます.まあ世の中で騒がれている育児の問題はここではかなりマシな状況だと思います.
このほか,役付きの職員は細々とした会議や,研究所運営の雑用がいろいろあります.ただ,これは学生さんがいる大学の方が圧倒的に大変そうです.

さて,研究者の具体的な日常はどのような感じでしょうか.
私の回りの典型的な研究者の場合は,お昼前までには研究所に行ってお昼を食べ,いろいろと仕事をして,おなかがすいたら途中おやつを食べ,夕方は晩御飯前の時間に適当に帰るという感じ
...ってこれでは小学生の日記みたいですが,こんな感じの勤務だと研究者じゃないご近所さんにはまともな仕事についてないんじゃないかと疑われるという笑い話もあります.実際には家でもどこでも区別なく仕事をする感じなので公私の区別をつけるのがなかなか難しいです.

具体的な仕事内容は,論文を書くのが仕事だと書きましたが,実際には書くアウトプットよりもはるかにたくさんの論文を読んだりしてインプットをたくさん入れる必要があります.新しいことを見つけるためには,過去の研究をできるだけたくさん知っている必要があります.

有名な言葉として
「巨人の肩に乗る(過去の偉大な研究の上に立てばわずかな新規性でも世界一の新しい研究ができる)」
「車輪の再発明をしない(ちゃんと過去の研究を調べて無駄に同じことを発明するのを防ぐ)」
というのがあります.そのためにたくさんの論文を読んだり,勉強会やセミナーを開いて研究を他の人に聞いてもらったりということも日常的に行われます.外に出かけて行って学会等に出かけるのも勉強になります.これらは完全に自発的なもので,最終的に自分が最大限の研究成果を出すために自分自身で判断します.

普通の研究者が雑用的にやる仕事としては,予算申請と学会関係の仕事があります.
研究をするのに,自分の研究所からもらう研究費だけでは足りない場合も多いので,科研費やいろいろな補助金などに申請する書類を書きますが,これは結構大変です.多くのポスドクを雇ったり,大型装置の維持費がかかるような研究者だと本当に大変ですが,私のような研究者はできるだけ予算申請は最小限にして研究に集中できるようにしています.

もう一つの学会関係の仕事は,論文査読と学会開催の委員が主な仕事です.これらはほぼ完全にボランティアですが,特に大きな資金源を持たない学会はこうしたボランティアに支えられて成り立っています.

というわけで十分長くなってしまったので今日はこの辺にしておきますが,研究者も人の子.スランプに陥ったり,精神的に辛くなることも往々にしてあります.そんなときは気分転換も必要で,まあこれは人によっていろいろだと思いますが,いろいろな仕方で息抜きもしながら研究者の日常を乗り切っています.まあその辺の話の方が面白いと思うのですが,それはいずれ稿を改めて.

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IBIS2017 & カーネル多変量解析9刷お礼

IBIS2017 が今年は東大で開催されました.
20周年で,私は最初の回以外は一応全部顔を出しているつもりですが,
@shima__shima さんは全部出ているということで,懇親会のときに初回の予稿集とかを持参されていました.私の聞く範囲では初回から全部出られている方はそんなに多くないと思います.

ポスター発表は例年通り活発でほとんど立錐の余地もないくらいでした.
ディープラーニングが少なくて安心しました.

多数の発表があり,まだいろいろと十分消化しきれてはいないですが,非常に勉強になりました. 
実行委員&PCの方々ありがとうございました.

実は今回安田講堂には初めて入ったので記念写真を撮りました.
最後の東工大渡辺先生の含蓄あるお話の前に撮ったので最初のスライドがちょっとだけ写っています.
みなさんには機械学習の未来についてどのような景色が見えているでしょうか.

ちなみに来年は札幌にて開催との情報です.

学生のときは安保闘争の後そのまま放置されていたので、今回学会で初めて入りました。

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さて,話は変わりますが,おかげさまで細々と売れているカーネル多変量解析が11月6日付で第9刷となりました.
刷ごとの部数はとても少ないですが,ここまで息の長い本になるとは当初全く思っていませんでした.
数学的な厳密性では多少怪しげな記述は多いですが,易しい方のカーネル本としてお読みいただいているのかなと思います.
今後ともご愛顧よろしくお願いします.


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