朱鷺の杜(IBIS)ブログ

情報論的学習理論(IBIS)に関する管理人の独断と偏見に満ちた意見

科研費について

科研費について書こうと思っていたのだが,ここのところいろいろ発表準備とかで忙しかったので今頃になってしまった. 多くの組織ではすでに組織内締め切りが終わっていると思うので今年についてはあまり役に立たないかもしれないが来年以降の参考になるかもしれないと思いメモ.

科研費は大学や独法研究機関の研究者にとって研究費の大きな糧である. 昨今国からの交付金が毎年何%かずつ減っている状況では科研費なしに研究するのは難しい.

私は昨年度から2年間,「スタート支援」という枠の審査委員を務めさせていただいた.審査委員には厳しい守秘義務があり,公表されるまでは自分が審査委員であることも守秘義務の一つである.
現在は JSPS のホームページにも名簿が出ているのでこうやって書くことができるわけだが,当然ながら審査の詳細については守秘義務の範囲内でしか書けないのであらかじめご承知いただきたい.

JSPSの科研費審査に関するページ

なお,スタート支援は今締め切りを迎えている基盤などとは時期も性質も若干違うのでそのあたりもご注意を.


さて,大まかな審査の流れは上記のページに書いてあるように,一次審査(書面)と二次審査(合議)からなる.
スタート支援では同じ審査委員が務めるが,基盤などではそれぞれ別の委員が務める点が異なっている.

まず,書面審査だがこれが大変である. JSPS から大きな冊子が何冊も送られてくる. 分野や年によっても違うが一人がおよそ100件の審査書類を2週間程度の期間で審査する.
何をどう審査するかは上記のページの規定や手引きの pdf が参考になるが,各申請書類ごとに学術的意義とかいろいろな観点から点数付けし,最後に全体評点とコメントを付ける.
これが大変な作業で,かなり幅広い分野に及ぶので,自分のよく知らない分野の申請書類については web や本などでその分野の動向を調べる必要があるし,コメントも長所短所を詳しく書くように JSPS に指示されている.
さらに,総合得点については全体の評点がガウス分布状に均等に分布しないとシステムが受け付けてくれないという厳しさである.

というわけで,1件の審査にかなりの労力を要するので,2年目は NIPS のレビューも断るなど万全の体制で望んだのだが,そのうち1週間は海外出張で潰れるということになってしまい今年も大変だった.
これの合否が研究者の研究活動に大きな影響を与えるかと思うとそうそうおろそかな評価はできない.

さて,合議審査は書面審査の結果に基づいて1日缶詰になって審査委員のグループで協議を行う.応募数の割に採用できる数が極めて少ないので,特にボーダーライン付近の多数の申請書の中でどれを採用するかは分野が幅広いこともあり相当難しい. 最後の2-3件を決めるときはかなり長い時間をかけて熱い議論が戦わされる.

どんな申請が通りやすいかについて web で検索するといろいろ出てくるが,こればかりは審査委員や分野によってもかなり違うようなので一概には言うのは難しい(もちろん守秘義務があるのであまり書けないというのもあるが).
ただ,一般論として問題のないと思われる範囲でいくつかポイントを挙げておこう(私見もあるので責任は負いかねます.念のため).

・審査の手引きなどを読んで,何がどう審査されるのかを見て,それに沿って書かれているか見直す

・科研費では,高額の申請以外は研究終了後のレビューは(短い成果報告を出すだけで)ほとんどない. だから,申請者が本当にこのテーマでできるのかということを審査委員に納得させる必要がある. エビデンスもないのにあまり大風呂敷でもだめだし,かといってあまりトリビアルな研究でも評価が低くなる.

・申請書はできるだけたくさん埋まっている方がいいという話があるが,単純に引き伸ばしてだらだら長いのは逆効果な気もする.

・かなり細かい点まで審査する必要があるのでナナメ読みすることはあまりない. だから,キーワードを太字や下線などで過度に装飾してあると文章として読みにくいのでやり過ぎは逆効果かもしれない.

・審査はモノクロ印刷された紙ベースで行うのでカラーは使わない.

・予算の使用予定については科研費で支出することが必然であるというロジックが必要である. 科研費は配分してからはある程度自由に使える(ただし昨今はかなり使途がかなり厳しく制限されはじめている)ので,あまり曖昧だと本当にそれに使うのか,その必要があるのか疑念を抱かれかねない. 分野によっては旅費などあまり多額に積んであると嫌われることもあるようだが,情報系をはじめ理論系などでは旅費は主要な研究活動費だから正直に詳しく書いてあれば特に問題ないと思う.

また,科研費の分野ごとの採択数はその分野での応募数と応募額に比例する(これを単純に平均している所がどうかという話はあるが).正確な計算式は規定のp.42にある. これがあるため,いくつかの分野のメーリングリストでは分野全体に応募を促すようなメールが流れることがある. そもそも研究費不足が慢性的に起きているのでそんなことしなくてもみんな応募するとは思うが,一応知っておいたほうがよいだろう.

現状の審査システム自身いろいろ問題を含んでおり,合議審査の最後にもそれについて議論する時間があり,JSPS に要望がいろいろ出ているようなので,少しずつ改善はされていくと思う.
そもそも審査のオーバーヘッドが非常に高いので,研究者として最低限研究していくだけの低額の科研費についてはバラマキでもいいという意見も聞いたが,ある程度そのとおりだと思う(これは論文の査読制度についても同様).

あと,JSPS が提供しているのは MS word の書類だが,ずいぶん操作性が悪いようで,私が twitter でフォローしている TL では LaTeX の科研費マクロが好評なようだ.私も次回応募するときは LaTeX マクロで書こうと思う.

なお,科研費について検索すると科研費の審査委員の統計問題提起しているブログなども見つかりいろいろ考えさせられる.

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