朱鷺の杜(IBIS)ブログ

情報論的学習理論(IBIS)に関する管理人の独断と偏見に満ちた意見

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神経回路学会誌2007.6

今月の神経回路学会誌はなかなか内容豊富です。

川人さんの巻頭言からはじまって、特定領域 DEX-SMI のチュートリアル連載で樺島さんが気合いの入った解説を書いています。
それから ASCONE (神経科学オータムスクール)の講義録として、川人さん、石井さんの講演が掲載されています。

樺島さん解説「More is different の話」:基本的に去年の IBIS の前に聞いた招待講演の話で、磁石の例からはじめて、CDMA という情報科学的な問題に統計物理的な観点が有用であるという筋。物理と数学の対比で「形式的には同じような枠組みで表現されるのにモノの科学は数学的な厳密性に少々目をつぶってでもより複雑なシステムを解析する方向に様々な技法を発展させ、一方のコトの化学の理論研究は数学的妥当性を重視しながら慎重に結論を導くスタイルを発展させた」という記述があります。自分を振り返るとどちらかというと物理的なセンスに近いと思うのですが、物理をちゃんと勉強していないのでワザが伴っていないのですね。というわけで今後期待したいのは、物理のワザを素人が使えるように整備してもらうことなのではないかと思いました。

川人さん講義録「小脳の学習理論、LTDのシステムバイオロジーモデル、そして操作脳科学へ」:これはなんと37ページにも及ぶ力作です。30年分ぐらいの脳研究全般がぎゅっと凝縮されていて、読んですごく得をしたような気になります。業界の裏側みたいな話もいっぱいあります。自分にはちょっとついていけない世界だなーという気もしてしまいますが。技術的な話では、フィードバック誤差学習が最初にあり、私も一時期学生さんとやってみたことがあるのですが、今になって思うのは、数理的には強化学習みたいなのとどういう関係になっているんだろうという漠然とした疑問はあります。それから脳科学の難しさについてもいろいろ書かれています。「「脳を鍛える」だとかの、訳のわからない神経神話が世間にはびこってしまうのも、そういうもどかしい状況が多少影響していると言えなくもないと思います」「世の中に蔓延る似非脳科学者や脳文化人がでたらめなことを言ってたとしても、いつまで経ってもちゃんと反証できないと思うのです」
というわけで、これをBMIなりの考え方がそういう状況を打破できるのではと言う主張です。質疑の中で、「AICのような議論をしてシンプルなモデルがいいと言っても、それはあんまり歯切れがよくないですし、ほんとに我々人間が納得するのは、その考えている理論に基づいて力学計算して、月までロケットとばしてちゃんと戻ってきたときだと思うんです。そのときに、ああやっぱり物理学って素晴らしいんだなって、心の底から信用してしまいますよね」というのがありました。自分はたとえ月までロケットで飛んだとしてもそれが理論が正しかったからなのかそうでないのかわからないという気持ちが残ってしまいます。まあこの引用はあくまで例え話でしょうけど。

石井さん講義録「不確実環境における意志決定のモデル」:強化学習と脳との関連についてが主な筋です。脳の観察に基づくとTD学習などよりも効率的な学習アルゴリズムが存在するのではないかというモチベーションに基づいて研究を進めている様子が非常に共感がもてます。短い講義録なので、技術的な部分で不明な部分も結構あるので、石井さんのもっと長い解説が待たれます。

なお蛇足ですが最後の理事会議事録を読むと、来年度は神経回路学会の全国大会がつくばで開催予定ということなので、みなさんお楽しみに。
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