朱鷺の杜(IBIS)ブログ

情報論的学習理論(IBIS)に関する管理人の独断と偏見に満ちた意見

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

カーネルむかしばなし(その5・最終回)

久々の更新です.
もともとちゃらんぽらんで,ものぐさな性格なのが,11月以降信じられない
くらいの高頻度で更新していたのでその反動が来たのでしょう.
サポートページ の方の更新もぼちぼちです
(各章への補足などは,みなさんからのフィードバックや質問が原動力ですのでよろしくお願いします).

よく考えると,このいい加減さはカーネル法にも通じていますね.
カーネル法は精度と汎化と計算量の妥協の産物みたいなもので,最適性とかに
強いこだわりを持っている人には受け入れにくいかもしれません.
(まあ岩波本は,カーネルすごいぞっていう本じゃなくて,カーネルっちゅうちょっとおもろいやつがおるっていう感じの本です)

ともかく,よくそんな性格で本が書けたなあと思われるかもしれませんが,これは
ひとえに編者と出版社の方のおかげです. それに,逆に細かいところまで気になる
性格だと,直しても直しても直しきれないのでいつまで立っても原稿が仕上がらない
ということはあるかもしれません.(私は「まあこんなもんでいっかー」てな感じで脱稿したので)
本に載せた図とかも私が作ったのはかなりいい加減で,出版社の方で細かく修正して
くれました. こういうのもフォントとか線の太さとか気になる人は時間を食うんでしょうね.

私の知っている研究者は(少なくとも私よりは)もっと細かい性格の人が多いと思います.
まあこだわりが強い方が研究者向きなんでしょう. 用語の使い方とか,言い回し,図の書き方とか,
私にしてみれば「どっちでもええやん」という感じなのですが.

さて,岩波本はあいかわらずふつうの本屋では見かけませんね.
Amazon と生協ではまあまあ売れているようなので,知る人ぞ知るという存在という位置づけなのでしょうか.

ちなみに,図書館横断検索というのがあるのを知り,ちょっと調べてみると,
現在のところ茨城県には結城市にある「ゆうき図書館」にだけあることがわかります.
ゆうき図書館えらい!
北海道・東北地方の公共図書館には1冊もないらしいです.
やっぱりラテンのノリは北国では受けないのでしょうか.

さて,最後は気鋭の若手研究者である柴田さんのブログでも取り上げていただいた,
カーネルむかしばなしの第5弾です.
NHKで取り上げるとかいうでかい話まで書いてもらいましたが,それは恐れ多いので,
せいぜいコマ大数学科か? あるいは西原理恵子氏に挿絵を描いてもらって
「なんちゃって機械学習」という本を出版?というのを目標にしたいと思います.
(もちろんそれらもありえないと思いますが)

ただしカーネルむかしばなしもとりあえず今回で最終回にしようと思います.
次回作はサスペンスか,青春ものか,あるいは官能小説か?
いろいろ構想がないわけではないですが,あまりもの書きやブログばかりにうつつを
抜かしていると某先生に,
「○○は学者としては二流ですが,ああいうものを書かせると結構うまいです」
の○○に入れられてしまう危険があるので(知る人ぞ知るネタ),
しばらくは研究(?)に専念したいと思います.

→第1弾
→第2弾
→第3弾
→第4弾

ティホノフはカーネルを食事に誘いました.

「おまえはいつもリアルバリューセットばかり食べておるようじゃな」

「だって,リニア国の人はみんなこれを食べていましたよ」

「たしかにリアルバリューセットは食べやすい.
じゃが,おまえはフィーチャー国の血を引いているから,もっといろいろなものを
食べることができるのじゃ.
このレストランには凄腕のシェフがおるから,いろいろ注文してやろう」

ティホノフはストラクチャというシェフを呼び,いろいろと作らせました.

カーネルははじめて見るいろいろな食べ物に驚きながらも好奇心に駆られて
ティホノフに尋ねました.

「あのひもみたいなものはなんですか?」

「あれはストリングじゃよ. バイオインフォの谷でたくさん収穫されるという話じゃ.
これをおまえが食べられるように調理するにはベルマン料理ブックにある秘伝が必要だそうだ.」

「この網みたいなのも食べられるのですか?」

「そうじゃ,それはグラフと呼ばれるもので,蜘蛛の巣川で取れるものじゃ.
これを食べられるようにするにはストリングよりも骨が折れるらしい.」

ストラクチャの腕がよいのか,カーネルはそれらの目新しい食べ物も容易に食べることが
できました.

「すっかりおなかがいっぱいになりました」

「そうじゃのう. 最近は食べ物の量はやたらと増えておるようじゃ.
じゃが,その中にはほんの少ししか栄養が含まれておらん.それを取り出すのが
おまえの役目じゃ.
自分の能力を使って,大量の食べ物から高い山を作ってその頂点をめざすというわけだ.
そのときにディメンジョンの呪いを受けないためにレギュラリゼーションの呪文が必要になる.」

「そういえば,私は呪文を使わないときは無限の力があるように思うのですが,
呪文を使うと途端に有限の力に落ちてしまうように思うのです」

「それこそクアドラティックレギュラライザーの秘密,レプレゼンターの力じゃ.
確かに無限の力というのはすごいことじゃが,それをそのまま扱うことは無理なのじゃ.
レプレゼンターの力によって,無限の力によって作られた山も容易に登れるように
なるというわけじゃ.」

「そうだったのですか. それで,これから私たちはどこに行くのでしょう」

「そうじゃな. もうわしがついていく必要はあるまい.
おまえはここから一人で旅をするがよいぞ.」

ティホノフのいきなりのこの申し出にカーネルはびっくりしました.

「えっ,そっ,そんな... わたしにはまだ知らないことだらけです.」

「もうおまえはレギュラリゼーションの書を読む力を十分身につけた.
人に教えられるだけでは真の力は身につかん.
おまえ自身で考え,経験を積み重ねることによって成長するのじゃ.

別れの餞別にこの指輪をやろう.
おまえが作る山が登りやすいのは,リニア国人の性質というだけではない.
おまえのしているクアドラティックの指輪の石が凹みのない凸な形をしている
ことが深く関係しておるのじゃ.
わしがもっているこのピースワイズリニアの指輪も凸じゃが,この指輪はいにしえの王である
ロバストとスパースが作ったもので,サポートベクトルという特別な山を作ることが
できる.

それではカーネルよ. 達者でな.」

そう言うとティホノフの体は光に包まれると共にだんだんと薄くなっていき,
ついにはすっかり消えてしまいました.

残されたカーネルの指輪にはいつのまにか新しい指輪がはまっていました.

「ティホノフさん,いままでありがとう.
まだリニア国を救うには力不足だけど,これから自分自身の力で旅をします」

こうしてカーネルの新たな旅がスタートしたのです.

(とりあえずおしまい)

カーネルむかしばなし(その4)

今年度最後の講義でW大に行ったら岩波本が3冊置いてありました.
書店に並んでいるのを見るのは初めてです.
北関東最大?の売り場面積を誇るイーアスつくばの本屋でも見たことがないので,
ひょっとすると北関東の本屋には存在しないのではないのでしょうか.
ビショップ本は産総研生協にも筑波西武の小さな本屋にも売っていましたが...

さて若干手詰まり感のあるカーネルむかしばなしですが第4弾をお送りします.

→第1弾
→第2弾
→第3弾

ティホノフはカーネルに言いました.

「おまえは父親のパラメータと母親のフィーチャー姫がどのようにして
おまえを作ったか知っておるか」

「よ,よく知りませんが...
ティホノフさん,いきなり18禁の話題でも大丈夫でしょうか.」

「心配ない. 『レギュラリゼーションの書』の読者は間違いなく18歳以上じゃからの.
それにおまえもゼットカイのカンブンポーキソで勉強していたじゃないか.
しかしそんなことはどうでもよい.
リニア国では子供を作るのはインナープロダクトというやり方に決まっておるのじゃ.
すなわち『中で掛け合わせる術』じゃな.
ガウシアンでは『子バリアンス』とも呼ばれておるからプロセスに聞いてみるとよいぞ.」

「インナープロダクトは友達のヒルベルトに聞いたことがあります.」

「おお,ヒルベルトと知り合いか. やつはファンクションスペース界の妖霊で,
インナープロダクトの秘伝を受け継いでおるからのう.
すでにおまえも知っておろうが,妖霊は恐ろしいものじゃから,話をするときは
ペンタクルの外に出ないようにしないとあっちの世界に引き込まれてしまうから
くれぐれも気をつけろよ.」

「それは承知しております.
ところでティホノフさん,私は両親のどちらにも似ていないような気がするのですが,
私は本当に両親の子供なのでしょうか」

「一見するとそう感じるかもしれんな. おまえが掛けている眼鏡を外してみるがよい」

カーネルは小さいときからなぜか掛けさせられている眼鏡を外してみました.
すると,自分自身の中に母親のフィーチャー姫の姿が隠れているのが見えました.

「どうじゃ. その眼鏡はカーネルトリックの眼鏡と呼ばれておる.
おまえの体は実はフィーチャー姫とフィーチャー姫がインナープロダクト
をしてできたものなんじゃよ」

「えっ,それってひょっとしていわゆる単為生殖ですか?
そうすると,父親から引き継いでいるものはないのでしょうか」

「そうあわてるでない.
おまえの一つ一つの細胞は確かに母親のものじゃが,その細胞をどう組み合わせるかは
父親からちゃんと受け継いでおるのじゃ」

「それを聞いて安心しました.
でも,なぜカーネルトリックの眼鏡が必要なのでしょうか.
私には眼鏡を外した方がリニア国の人間らしい姿に見えるのですが...」

「ディメンジョンの呪いが強いときにはカーネルの姿でいる方が防御になるのじゃ.
だから,敵が襲ってくる可能性があるときはその眼鏡は外してはならんぞ」

「わかりました.
しかし眼鏡をかけたままでも子供を作ることができるのでしょうか.
カーネルの姿ではどうやってインナープロダクトすればよいのかわかりません.」

「そこが肝心なところじゃ.
おまえはおまえ自身とインナープロダクトをすることによって子供を作る.
そういう意味でおまえは母親と同じ能力を持っているのじゃ.
しかし,おまえが特別なのは,おまえがインナープロダクトしてできた子供は
おまえ自身になるということなのじゃ.
これこそカーネル,おまえがリプロデュース王朝の真の後継者である証なのじゃ」

カーネルはなんだかきつねにつままれたような気持ちになりました.

「わたしはいったいどれが本当の自分かわからなくなってしまいました.
リニア国のパラメータとフィーチャー姫の子供なのか,ポジティブな脳天気人間か,
ガウシアンのプロセスの双子なのか,それともそのリプロデュース王朝の末裔なのか...」

「すべてが本当のおまえじゃよ.
全く同じものでも見方によって全然違うものになるというのは世の中にはよくあることじゃ.」

「なんだかよくわかりません」

「ちゃんと理解するにはもう少し修行が必要かもしれんな.
じゃがそもそもこの世界は例え話の世界じゃから,この辺りが限界なのじゃ.
おまえが何者であるかは『レギュラリゼーションの書』の 6 章の最初の図に
書いてあるからよく見ておくがよい.
さて,これでおまえ自身についてはかなりわかったじゃろう.
次からはいよいよ敵と戦う術について教えてやることにしよう.
今日はずいぶん頭を使ったから酒でも飲んで寝ることにしよう.」

「ティホノフさん飲んで寝てばかりいませんか?」

「そんなにあくせくしてもしょうがないぞ.
世の中に流されずのんびり構えていることも大事なことじゃ」

(ベイズ国とはあまり関係なかったなあ...つづきはいつになるやら...)

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。

さて、お正月休みは(ある程度予想はしていましたが)寝正月でした。
昨年のお正月は夜なべして本を執筆していたので許してください。(正月休みに40ページの原稿を100ページにまで増やしたのでした)

片付けようと思っていた査読も大して減らず年越ししてしまいました。
# しかしやっぱりどう考えても査読引き受けすぎだwww
# もう何を頼まれているのか全部把握しきれないwww

岩波本の売れ行きもお正月休みの間はがくんと落ちていたようで、まさに大学・企業関係者
ばかりが買っているというのが明らかに... (当たり前だ)

近所のおばさんとかに買ってもらうにはやっぱり「カーネルむかしばなし」みたいな話も入れないと
だめだったかな。 (それでも買わんと思う)

誤植を指摘してくれた早稲田の日野さんに「赤穂さんはファンタジーオタクですか?」と聞かれて内心焦りました。 うーむ、私のファンタジー歴は rogue と nethack を卒論・修論の時やりまくり、後は本でしょうか。
まあカーネル多変量解析執筆にあたって指輪物語を意識したことは確かです。 (かけらもわからんが)
というわけでトールキンがホビットについていきなり詳しく書き始めて多くの読者を挫折させたのに習って、
現在の6章をはじめに持ってきたのですが、それはほとんどすべての読者を挫折させてしまうと
言われて泣く泣く後ろに回したものです。

しかし上述の日野さんは6章と7章が読みたくて買ったと言っていたので世の中は広いものです。

さて、ジュンク堂書店さんのページを見ると、なんと22冊在庫ありとあります。 しかもこれは私の記憶によれば年末から変わっていないです。
ジュンク堂さん、私の本を買い取ったおかげで経営危機に陥ったらごめんなさい;o;

というか著者としては22冊平積みされているのを見てみたいのですが、いかんせん、池袋には行く用事がないのです。 誰か立ち寄ったら写真を撮って送ってください。

というわけで正月早々中身のないブログを書いてしまいましたが今年もよろしくお願い申し上げます。
結局サポートページもほとんど更新していないし、カーネルむかしばなしもほとんど進んでないのでした。 期待してくださっている方々ごめんなさい。

(独り言:一応岩波本に分類してみたがやっぱりこれはただの雑談だな)

R と matlab

しましまさんから岩波本感想 audioswitchさんブログ を教えてもらいました.
わかりやすいと書いてありホッとしました.
その上森北本まで宣伝していただいています.
それにしてもしましまさんの情報収集能力はすごい.

それから,誤植情報もサポートページにて更新.
最近藤木さんや村田さんと共同研究しているメンバーの日野英逸さん@村田研さんが
たくさん誤植を発見してくれました. 感謝.
結構すごく基本的なところの誤植もあり,当たり前のところは校正でも結構スルーして
読んでしまっていたんだなと反省しました.

さて,今日の本題はカーネル法のプログラムについて.
岩波本では R 上の kernlab, matlab 上の spider, それから多様体あてはめでは
matlab 上の mani というパッケージを参考にしています.
ただし,表示はあまり印刷向きじゃなかったりするので自前で作りました.
やっつけ仕事でやったのでそのまま公開するには恥ずかしいので,多少整理したり
改良を加えてからサポートページに載せようと思います.

R と言えば,最近は解説書も雨後の竹の子のようにいっぱい出ています.
Amazon でも勧められてついつい買ってしまいます.
私が R の元となっている Splus を使っていた頃はこんなに広まるとはちょっと想像してなかったです.

そもそも最初に S という言語を知ったのはまだ学生の頃で,広津研の助手をしていた栗木哲さん(現統数研,もしかするとその前の椿広計さんかも)が演習かなんかのときに紹介していました.
その頃は統計なんかたいして興味もなかったのですが^^;プログラム言語好きだったので
なんとなく記憶していました.

その後電総研に入って,研究室の Sun のワークステーションに S が入っていて(栗田さんか麻生さんが入れていたと思う),
いろいろ触っているうちに,これは便利な言語だと思ってすっかり S/Splus フリークになっていました.
ただし,その頃はやはり計算機がまだ遅かったのであまりヘビーなシミュレーションとかは C でやっていました.

電総研から産総研に変わる頃,ICAの研究をかじっていたのですが,ICA では理研のグループを中心に matlab が全盛でした. というわけでしばらくしてお金ができたときに matlab を買って,それ以降は matlab の方がメインになっていきました.

そんな中で R が現在のようにポピュラーになってきたので,また2-3年前に再び R も使い始めたというところです.
フリーソフトウェア(もしかするとこの言い方は不正確かも)の割に Splus にひけはとっていないし,コミュニティも充実しているのが人気の理由でしょうか.

まあ R も matlab もそれぞれ長所短所があると思うのでその辺りの比較論議もやっていきたいですね.

というわけで今日はこの辺で.
カーネルむかしばなしも続きをどうするか悩みどころなのですが,まあどうせお遊びなので,お正月休みにぼちぼち考えようと思っています.
# っつーかその前に大量の査読の山を少しは減らさないと^^;;;

たぶんこれで年内のブログ更新はないのでごあいさつ.

岩波本をたくさんの人に買っていただき感謝いたします.
みなさまよいお年をお迎えください.

カーネルむかしばなし(その3)

Amazon のランキングなどを見ると,おかげさまで比較的よく売れているようで
著者としてはうれしいです.

ただし,私自身はまだ本屋さんに並んでいるのを直接見ていないので,
売れているのは Amazon だけかと心配にもなります
(目撃情報として K 大生協にあったという話は聞きました.
しかし非常勤をしている W 大理工の本屋にはありませんでした;;)

あと,Amazon だとなぜか
 本 > 科学・テクノロジー > 数学 > 微積分・解析
に分類されています.
(ひょっとして多変量「解析」だから? うーむ.
まあヒルベルト空間だから関数解析には関係あるんでしょうけど)

さて,どんどんマニアックになっていくカーネルむかしばなし第3弾です.

→第1弾
→第2弾

ベイズ国は海を渡ったプロバビリティ大陸にありました.
カーネルと魔法使いティホノフの二人は船に乗りこみました.

「これから行くベイズ国とはどんな国なのですか?」

「プロバビリティ大陸の中でも古い国の一つじゃ.
昔はフリークエント国と何度も戦争を繰り返しておったが,
今は平和条約を結んで落ち着いておる.
わしもしばらく行っておらんが,最近ではいろいろな国の種族が入って
とても強大な国になっているという噂じゃ」

「そんな国に行って大丈夫でしょうか」

「わしがついておる限り大丈夫じゃ.
カーネルよ. そんなに弱気になるでないぞ.
おまえはポジティブに考える家系に生まれついておるのじゃからの.
ほら,おまえが持っているレギュラリゼーションの書のこのページにも,
『カーネルはポジティブデフィニットなり』
と書いてあるではないか.」

「あっ 本当ですね. わかりました.」

そんなことを話しているうちに,船はベイズ国の港に入っていきました.

「ティホノフさん,あの高いピラミッドのようなものはなんですか?」

「ああ,あれはベイズ国の神殿じゃよ. ベイズ国ではベイズ教が信じられており,
あの神殿にはベイズフォーミュラという御神体がおさめられておる.
ベイズ教はなかなかよい教えじゃが,まだ子供のおまえには影響力が強すぎる
かもしれんな. だがわしがついておれば大丈夫じゃ」

こうしてカーネルとティホノフはベイズ国に上陸しました.

カーネルは初めて外国の地を踏んだという興奮がおさえきれません.
ベイジアンネット空中サーカスを見たり,人気の中華料理店インフィニットミクスチャ
やインド料理のバフェなどでたらふく美味しいものを食べてすっかり観光気分です.

「カーネルよ.楽しむのもよいが浮かれすぎるでないぞ.
われわれはこれから古都ガウシアンに向かうのじゃ」

「ガウシアンは両親から名前だけは聞いたことがあります.」

「そうじゃろう. ガウシアンとリニア国は古代の昔から深い関係があるからのう」

二人はほどなくガウシアンに着きました.
ガウシアンの街を歩いていると,人々が驚いたような様子で二人を見ています.

「みんななぜわたしたちを見ているのでしょうか」

カーネルがそう言いかけたとき,カーネル自身信じられない気持ちになりました.
なんとカーネルにうり二つの子供がこちらに向かって歩いて来るではありませんか.
ただ,着ている服はプロバビリティ大陸特有のものでした.
その子供は二人に話しかけました.

「わたしはガウシアンのプロセスというものです. 街のみんなの話を聞いてやってきました.
あなたがたはどなたです?」

「わしが答えよう. これはリニア国から来たカーネル,そしてわしは魔法使いの
ティホノフじゃ. リニア国を救うために旅をしておる.
ガウシアンのプロセス,そしてカーネルよ.
おまえたちはある意味双子のようなものなのじゃ.
それもカーネルの持っているレギュラリゼーションの書に書いてある.
プロセスのもっている知識がきっとカーネルの役に立つに違いないと思ってここに来たのじゃ.」

「それはようこそいらっしゃいました.長い旅でお疲れでしょう.
うちでしばらくお休みください」

プロセスとカーネルは子供同士すぐに打ち解け,いろいろな話をしました.
カーネルとプロセスは姿だけではなく食べ物の好みなどもそっくりでした.
また,カーネルが覚えたレギュラリゼーションの呪文は,ベイズ国では
神官のみに許されたプライアと呼ばれる秘伝の一種であることもわかりました.

「ティホノフさん,プロセスに会って私の力もアップしたように思います.
プロセスの言っていたプライアには,呪文の強さだけでなく,ハイパーパラメータとかいう
ものを使ってもっと複雑にコントロールできるのもあるそうなのですが...」

「カーネルよ. 複雑であればよいというものでもないぞ.
下手をすればノンリニア国が陥った過ちを繰り返すことになる.
おまえはとりえあず最も簡単なクアドラティックレギュラライザーの呪文に
磨きをかけることじゃ. クアドラティックレギュラライザーにはまだおまえの
知らぬ秘密が隠されておるのじゃ. 今日はもう遅い.
この話はまた明日話すこととしよう. わしはもう寝る.」

カーネルはプロセスから聞いた話や,今ティホノフが言った言葉について考えている
うちに眠りに吸い込まれていきました.

(ベイズ国後編に...つづいてもいいのか?)

カーネルむかしばなし(その2)

ごくごくマニアックな一部の方に期待していただいている
カーネル多変量解析発売記念?カーネルむかしばなしの第2弾を
東京から帰るつくばエクスプレスの中ででっちあげました.
あまりひねりがないのですが,まあ楽しんでいただければと思います.

→第1弾はこちら


あるときカーネルの前に怪しげな老人があらわれました.

「わしはこの中つ国ができる前からこの地を見守ってきた魔法使いじゃよ.
わしはいろいろな名前で呼ばれておるが,とりあえずティホノフと名乗っておこう.
わしが来たのはほかでもない.
おまえにこの『レギュラリゼーションの書』をさずけるためじゃ.
この書はディメンジョンの呪いを解くのに役に立つものだ.
ともかく最初のページにある呪文を読んでみなさい.」

カーネルは半信半疑ながら最初のページに書かれた呪文を
唱えてみました.

「ク...クアドラティック レギュラライザー」

すると,今まで見えていた幻の山が消えかかったような気がしました.

「もっとはっきりと大きな声で!」

そこで今度はどなるように同じ呪文を唱えました.
すると,今度は幻の山はすっかり消えたものの,逆に今までリニア国にあった
山よりも低い山になってしまいました.

「ティホノフさん,こんな低い山では私の国は救えません」

「うむ. この呪文はちょうどよい強さで唱えねばならん.
訓練をすればちょうどよい強さの調整もできるようになるわい.」

カーネルはこのティホノフと名乗る魔法使いからもらったレギュラリゼーションの書
をパラパラとながめてみました.
最初の方こそリニア国の言葉で書かれてありましたが,途中からはちんぷんかんぷんで
何が書いてあるのかまるでわかりません.

「... ティホノフさん,この本にはいったい何が書いてあるのですか?」

「いろいろなことが書かれておるが,大切なのはカーネル,おまえのもつ秘密が
書かれているのじゃ.
これからいろいろな国を旅して修行を積み,さまざまな敵や仲間との出会いを通じて
この本に書かれていることをおまえ自身の力で明らかにするのじゃ.
そうすればおまえの真の力を発揮することができるようになる.」

「それでリニア国は救われるのですか?」

「もちろんじゃ. しかしおまえが救うのはリニア国だけではないぞ.
ノンリニア国とてもおまえに救われることになるのじゃ.
まあそれは先の話だが.」

「しかし,私一人だけで出てくる敵に立ち向かえるでしょうか?
いただいた書の最初のほうだけしか読めないのに...」

「心配するな. わしも一緒についていってやる」

カーネルはこの調子のいい魔法使いに少々不安を抱きながらも旅に出る決心を
しました.
魔法使いとお城に行き,このことを父親のパラメータ王子と母親のフィーチャー姫に
伝えに行きました.

「おお,これはティホノフ様. お久しぶりでございます」

「うむ. 久しぶりじゃな.わしはこれからカーネルを連れて旅に出る.
おそらく旅先には困難が待ち受けているが,リニア国に戻ってきたあかつきには
カーネルはりっぱにこの国を救うことになろうぞ」

カーネルは,多少胡散臭いイメージを抱いていた魔法使いが両親の知り合いだったことを
知って,安心してついていくことにしました.

「それでは父君,母君,ご心配なきよう.
ティホノフさん,最初はどちらに向かいましょうか?」

「そうじゃのう. とりあえずベイズの国にでも出かけるか」

こうしてカーネルと魔法使いはリニア国を旅立っていきました.

(ベイズ国編につづく...かも)

産総研停電中にて,執筆活動を振り返る

タイトルにあるように,年に2回の産総研停電のためサーバーが停止中で,
岩波本のサポートページもつながりません.
本を買っていただいた方で
「つながらないじゃないか」
とお怒りの方がおられるかもしれませんがご容赦ください.
(ただし読者の少ないこのブログでこれを書いても意味があるのかどうか)

通信学会の特集号の方も12/4まで締め切りを延長し(このブログで広報するのを忘れた),多数の投稿をいただきました. ありがとうございました.

それにしても本を書き終わったので暇になるかと思いきや,たまった査読の催促やら,上記特集号の雑用やらで全く息つく暇なしです.
それでも本を書いているときのプレッシャーに比べれば軽いものです.
査読は食べ物にたかるハエのように次から次へとやってきますが,
まあ多少締め切りを過ぎても(多少ではないという説もあるが^^;)そんなに困らないという話もあります.
ただ,国際会議や論文誌も特集号なんかは締め切りが厳しいので,そうなるとハエと言うよりは論文がピラニアに見えてしまいます... (骨だけにしないでくれー)

それに比べると,本を書いているときは,まさに借金取りに追われている心境で,返しても返しても元金が減らない苦しさがありました.(「今日はこれだけで許してください.明日までになんとかしますから」)

あるいは24時間テレビで100kmマラソンを走らされている芸人の心境という方が近いかもしれません.
完走すればそれはすばらしいということはわかっているのですが,
果たしてゴールできるのか全く先が見えない状態.
足はガクガク,青息吐息でもうフラフラ. それなのにリタイヤできない.
その上できれば放送時間中にゴールしたい.
そんな状態が1年以上続いていたと思えば,精神的には今はぐっと楽です.

さて,かみしまさんに岩波本の書評を書いたブログがあると教えてもらいました.
ここよりはずっと読者も多く,ずっと有名なDO++さんのブログです.
おおむね好意的な感想で少し胸をなでおろしております.
著者の意図もかなりくみ取っていただけているようでうれしいです.

「様々な解説記事で定評のある」というところは,某氏に草稿段階で,
「解説記事をたくさん書いている悪いくせが出ている」
と指摘された部分でもあります.
雑誌に数ページ解説を書くのと本を丸一冊書くのとではえらい違いということが身にしみました.
某氏の指摘のおかげで悪いくせの部分は多少直っているとは思いますが.

もともと,構想段階でどんな本にしようかと思ったときに思ったこと:
・とっても売れているらしい「サポートベクターマシン入門」なんかとは違う本にしたい.
 さらにビショップ本なども出てきて,ほかの本にはない特色を入れたいと思いました.
 従って「他の和書ではあまり見たことがない内容が多く」とDO++さんに書いていただいたのは
 一応の目的は達したことになります.
・多少マニアックでも自分のために書こう(トールキンも自分のためにホビットの話を書いたらしいので)

ただし現実的な問題として,
・ページ数の制約などは結構きつい(それでもあれだけの分量まで増やすのはすごく大変でしたが)
・あまり独りよがりだと全く売れない(最初は現在の6章が2章でした^^;)
・一人でなんでもかんでもやるのは大変(ビショップのようにお山の大将で部下に TeX 組みや図表作成をやらせられれば楽なのでしょうが...)

という辺りが最初の頃は最も大変でした.
終盤には別の苦労があるのですがそれはまたいずれ別の機会に.
...というか本を書いている人でここまで愚痴っている人は見たことないなあ^^;;;

おすすめの理由・おすすめしない理由

発売日は昨日でしたが,Amazon では「この商品はお取り扱いできない」扱いされていたので
入手困難な状況でした. 現在やっと「在庫あり」になりました.

岩波のホームページでも「目次」,「まえがきより抜粋」が読めます.

本書の「おすすめの理由」と「おすすめしない理由」を考えてみました.

「おすすめの理由」
・気の利いた?クリスマスプレゼントを送りたい方へ
・年度末の予算を有効に?使いたい方へ
・サポートベクトルマシン以外のカーネル法についても知りたい人へ
・ビショップ本では物足りない(ビショップ本が高くて買えない)方へ

「おすすめしない理由」
・ビショップ本を買ってしまったので(あるいは株で損して)お金がない人
・理論なんか興味はなく,ソフトの使い方だけ説明してくれればいいという方
・個人的に著者が嫌い

なんかまだまだいろいろありそうなのでそのうちサポートページにページを追加しておこうっと.
それから,「カーネルむかしばなし」はカーネルの巻き返しの旅がはじまる予定です.
こちらも時間ができたら続きを書くつもりです.

さて,私のところには26日に岩波から送られてきて初の対面を果たしたわけですが,
統計科学のフロンティアのような表紙を想像していた私は,
全然違う雰囲気の表紙に最初ちょっとびっくり.
でも,よく見ているうちにこういうのも軽快な感じでいいかなという気がしてきました.
ベースは白で,そこに青い色ですっきりとしたデザインがされています.
詳しくはお手にとってご確認ください.
本を見ると統計科学のフロンティアと同じく蛯名優子さんという方の装丁となっています.

それから,確率と情報の科学のシリーズ一覧も出ています.
編者の一人の伊庭さんがならべかえたリスト:

多変量解析と因果推論――「統計入門」の新しいかたち 狩野 裕
データ解析のための統計モデリング入門 久保拓弥
調査観察データの統計科学――因果推論・選択バイアス・データ融合 星野崇宏
テキストモデリング――階層ベイズによるアプローチ 持橋大地
カーネル多変量解析――非線形データ解析の新しい展開 赤穂昭太郎
帰納推論機械:確率モデルと計算アルゴリズム 田邉国士
確率モデルのグラフ表現とアルゴリズム 池田思朗
符号理論と統計物理 田中利幸
確率モデルと知識処理 佐藤泰介・亀谷由隆
強化学習――理論と実践 石井 信
乱数生成と計算理論 小柴健史
マイクロアレイ解析で探る遺伝子の世界 伊藤陽一
生命のかたちをはかる――生物形態の数理と統計学 三中信宏
正定値行列の情報幾何――多変量解析・数理計画・制御理論を貫く視点 小原敦美・土谷隆
情報幾何入門――エントロピーとダイバージェンス 江口真透

どれも楽しみな本です.
著者の皆様執筆がんばってください(終わったものの余裕か^^;)
読者の皆さんお楽しみに(冊数が多いので予算をたくさん用意しておいてください)

少々追記しました. 【“おすすめの理由・おすすめしない理由”の続きを読む】

カーネルむかしばなし (その1)

やっとAmazon でも予約が可能になったようです.
といってもイメージはまだありません(というか私もどんな表紙になるのかまだ知らないのですが...)

カーネルについて少し解説しましょう.
(ただし,このブログの読者はほとんど専門家でその必要はない人ばかりかも
しれないですが,サポートページから来る人もいるので)

カーネルというと検索エンジンでまずひっかかるのは OS のカーネルですが,
カーネル多変量解析のカーネルは OS のカーネルとは関係ありません.

もう一つカーネルというとケンタッキーフライドチキンの創業者?のカーネルサンダースさんが思い浮かびますが,これももちろん関係ありません.
(というか英語にすると綴りも違うようですが)

というわけでカーネルの由来に関する昔話をしましょう
(これは本には書いてありませんが)

むかしむかし中つ国にはリニア国とノンリニア国という二つの国がありました.
リニア国は歴史が古く格式ある国でしたが,力はだんだん衰えていました.
一方のノンリニア国は新興の強大国で,飛ぶ鳥を落とす勢いでした.

リニア国とノンリニア国の間には,より高い山に登った方が中つ国を支配できるという
取り決めがありました.
リニア国にはお椀型の比較的登りやすいけれども低い山しかありませんでした.
それに対してノンリニア国には険しくギザギザとがった高い山がたくさんあり,
中つ国はもっぱらノンリニア国によって支配されていました.

こうして,たがいに仲が悪かった二つの国ですが,あるとき,
リニア国のパラメータ王子とノンリニア国フィーチャー姫が恋に落ち,
パラメータ王子はフィーチャー姫をノンリニア国から連れ去ってしまいました.

二人の間に生まれた子供がカーネルでした.
カーネルはすくすくと育ち,聡明で運動神経も抜群の子供で,
今まで分の悪かったリニア国の人々の期待を一心に背負って高い山へと
挑戦しようとしていました.

ところが,姫を奪われた恨みを晴らすため,ノンリニア国はカーネルに
ディメンジョンの呪いをかけてしまいました.
ディメンジョンの呪いというのは,それはそれは恐ろしい呪いで,一見高い山に登った
かのように思いきや,実はそれはまぼろしで,下手をすると足下を失って転落してしまう
というものでした.
そのため,カーネルは思うように力を発揮することができませんでした.

(つづく...かな?)

「カーネル多変量解析」発刊予定!

本の宣伝です.

Amazon などではまだ出ていませんが,一部のオンライン書店で
予約可能となっておりますので書いておきます.

一部の方々はすでにご存じかと思いますが,岩波書店の
統計科学のフロンティアに続く新シリーズ「確率の情報と科学」の第1回目として
拙著「カーネル多変量解析 ―― 非線形データ解析の新しい展開 ――」が
11/27 に発売予定です.

とりあえずサポートページhttp://www.neurosci.aist.go.jp/~akaho/kernel/ も作ってみました.

内容はカーネル法の入門書ということで,サポートベクトルマシンだけではないいろいろなカーネル法の話や再生核や正則化といった話を広く浅くまとめました. シリーズの第1冊目ということでプレッシャーがかかりますが,シリーズをつぶさないくらいは売れてもらいたいと思っています.

それにしても,ともかく1冊まるまるの本を書くというのがこれほど大変とは想像以上でした.
100mしか走ったことがない人間がマラソンに初挑戦したという感じで,
途中はゴールが見えず精神的にもかなりきつい状態でした.
この辺りのことや本についての解説やサポートはこのブログでもぼちぼち振り返ろうと思いますが,今日はとりあえず発刊予定の報告ということで.

以下岩波書店HPからの抜粋です.

確率と情報の科学 甘利 俊一,麻生 英樹,伊庭 幸人 編

インターネットの普及や観測技術の発達により,大規模データが容易に得られる時代.これらのデータをいかに高速に正確に解析し,法則の発見や将来予測に役立てるか.まさに新しい統計科学の手法や考え方が求められている.好評「統計科学のフロンティア」につづく新シリーズ.話題のテーマをモノグラフとして丁寧に解説する.

「カーネル多変量解析 ―― 非線形データ解析の新しい展開 ――」 赤穂 昭太郎 著

カーネル法によるデータ解析は今や生命情報科学やデータマイニングの分野では標準である.しかし文字列やグラフ解析など別分野に適応できるように自身で設計しようとすると容易ではない.本書は,カーネル法という多変量解析の底に流れる基本的な考え方を紹介して,読者自身が設計を行う際の道標になるような内容をめざす.

書店へのリンク
Yahoo
セブンアンドワイ
紀伊國屋ブックWeb
e-hon


前のページ

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。